大学、大学院での専攻はポリウレタン。アミノ酸を使った環境にやさしいポリウレタンの開発というテーマで研究をしていました。 学会などで他大学やメーカーの方に会ったりするうちに、私は、研究室に籠もるよりも、自分のつくったものを使ってくれる人に直接会い、喜ぶ顔を見るほうが向いているのでは、と考えるようになりました。 ニッタの仕事はユーザー企業に近く、いろいろな事業や製品づくりを経験できそうだったので、興味を持ったのです。
1年間の研修を経て、テクニカルセンターに配属となり、2年間かけて1つの研究開発を行いました。 手がけたのは、ニッタのグループ会社 ニッタ・デュポンでつくっている、半導体デバイス用の研磨パッド。半導体デバイスには、ナノレベルの研磨システムが必要で、その平滑性をさらに高め、生産性を上げるために、研磨パッドの素材を改良するという研究でした。 大学と共同研究をして教授と相談したり、素材メーカーや、もちろん納入先となるグループ会社の技術者とも何度もやり取りをしたりしながら、開発を進めていきました。 誰にも正解が解らない中で、いちから形にしていくのは、ワクワクしました。 でも、思ったような成果が出ず、方向性が見えなくなって苦しんだ時期もありました。試作品を次々につくってみたり、評価方法から見直してみたりと、試行錯誤をくり返し、結果的には、これまで使ったことのない素材を使うことで、ブレークスルーができたのです。
入社4年目にベルトの開発部門へ異動。いま担当しているのは、自動改札機やATMの内部で働き、キップや紙幣、コインなどを搬送するベルトです。 昨今はATMなどの機器メーカーも海外展開に力を入れているのですが、東南アジアでは高温多湿でベルトがへたりやすかったり、寒冷地では低温で硬くなりやすかったりと、国内にはない課題がでてきます。 そこで、開発のテーマは、海外の過酷な環境にも耐える性能を持つベルト。 ゴムに混ぜこむ薬品を変えるのはもちろん、素材自体も見直しながら、何十種類、何百種類という試作品をつくり、これだというものを先方のメーカーへ持ち込み、テストしてもらいます。 顧客からは「暑さと寒さ、両方に強いベルトを作ってほしい」といった、無理難題も(笑)。そうした声に応えて頑張っているうちに、複数の高い機能を持った新しいベルトの開発が、形になりつつあります。
ベルトの開発で得た経験を活かし、いずれは別の分野でも高性能な製品をつくりたい。各部署で私が関わった製品がヒット作になり、「これも大井がつくったんだってよ」といわれるのが野望です(笑)。 顧客のメーカーへ行き、話をしていると、「そういえば、他にこんなことにも困っているんだよね」といった話がでてきます。そうした要望に応えてモノづくりをしていくのが、大変だけれど、おもしろいことなんだな、と分かり始めました。ニッタの技術者として、これからいっぱいやることがあるぞ、という感じです。